Categories: 金融不動産 / セキュリティートークン
皆様、デジタル証券という言葉を聞いたことはありますでしょうか。「デジタル証券」とは文字どおり、有価証券をデジタル化したものです。暗号資産(仮想通貨)の発行と流通を支える「ブロックチェーン」(分散型台帳)という基盤技術を応用して発行します。
シンガポールや米国を始めとする諸外国では取引や市場の整備が先行していますが、日本では2020年5月1日の金融商品取引法および関連する政令の改正施行により「電子記録移転有価証券表示権利等」としてセキュリティトークンが規定され、「デジタル証券」の発行に関する法整備が行われたことを受け、法令に準拠した取り扱いが可能となりました。ようやく昨年から、投資家向けの商品の開発が本格的に進み始めています。
ここでまず、セキュリティトークンという言葉について軽く触れましょう。セキュリティトークンとは、ブロックチェーンと呼ばれる分散台帳技術やトークン(コイン)のノウハウを有価証券に応用したデジタルな有価証券のことです。セキュリティ(Security=有価証券)をブロックチェーン上で発行する「セキュリティトークン(デジタル証券)」を指します。
最近の話題を例に挙げますと、大手不動産運用会社のケネディクスが国内では最大となる69億円規模のSTO(セキュリティ・トークン・オファリング/Security Token Offeringの略でデジタル証券をブロックチェーン上で発行して資金調達する仕組み)を行いました。ケネディクスが今回手がけたSTOでは、146億円の資産規模を持つ神奈川県厚木市の物流施設を裏付け資産として、総額69億1500万円の資金を調達し、8月10日~16日の期間、一口100万円で6915口を個人投資家に販売。ケネディクスは、三菱UFJ信託銀行を受託者とする不動産信託「ケネディクス・リアルティ・トークンロンコプロフィットマート厚木I」を組成して、不動産証券を発行しています。大和証券が主幹となり、三菱UFJ信託銀行が開発したブロックチェーン基盤のプラットフォーム「プログマ(Progmat)」で管理されるそうです。
この新しい不動産投資方法。なぜここまで投資家の熱視線を集められるのでしょうか?ここからは私たちの見解を合わせて説明していきます。
収益不動産を小口化して販売する金融商品はほかにもありますが、「デジタル証券」とはなにが違うのでしょうか。例えば、REIT(不動産投資信託)のような従来の不動産小口化商品は、数件、数十件というまとまった規模の不動産でなければ証券化できませんが、「デジタル証券」なら、1件の不動産や、その一部だけでも証券化が可能になります。その分、1口あたりの投資金額も少額となります。
そして特徴的な違いとしてあげられるのは、
1.金融庁が管轄する証券会社が取り扱う有価証券として規制されていること
2.売却が簡単であること
「デジタル証券」の発行には、有価証券報告書を提出し、会計監査を受けるといった義務が課され、厳格な金融監督のもとで取引されるので、かなり安全・安心だといえるでしょう。また、 REITなどの上場された商品を除き、従来の小口化商品は、一度購入すると運用期間が終了するまで売却できない契約となっているのが一般的です。しかし、「デジタル証券」なら、市場でいつでも自由に売却できます。流動性の高さと、安全な取引、この2点は大きく投資家の心を惹きつけています。
・実物不動産投資に近い感覚で資産運用ができる
裏付け資産となる不動産の鑑定評価額が基準となるため、Jリートのような急激な価格変動がありません。セキュリティトークンはファンドの償還を待たずに途中で出資持分を売却できるうえ、税制面でも有利です。株式に比べてリスクが低く、投資対象が分かりやすい不動産は(未経験者が投資を行うのに)適しています。
・中間コストを省ける利点
デジタル証券では、取引コストが安くおさえられること、社債や不動産などを簡単に小口化して取引できること、即時決済ができることなどのメリットがあります。特に取引に手数料のかかる機関投資家と比べて、個人投資家から直接出資を受けるセキュリティトークンは、利回り以外の特典も組み合わせれば、売手からすればより高い価格で売却できると考えられます。個人投資家にとっても、これまで機会のなかったプロ向けの不動産に投資ができるという観点を持ち合わせています。
既存の金融商品取引の仕組みがブロックチェーンに適切に置き換われば、今後の大きなビジネス変革につながる可能性があります。取引の自動化によるコストの適正化(低下)によって、これまでにない小口化と流動化が可能となり、セキュリティトークンがあらゆる資産へ適用されていくこととなるでしょう。今後順調に、証券の発行、管理、流通のコストが低減すれば、これらの仕組みは今後10年程度で整備され、海外市場も含めた世界規模での取引も可能になっていくと考えられます。
ブロックチェーンという画期的なデジタル技術を不動産、金融と融合させ、こうして新たなビジネスが生み出されました。私たちもこの革新にワクワクした気持ちを抱いています。さてこのデジタル証券は、1000兆円を超える日本国民の眠れる現金資産を不動産に振り向けるエンジンになりうるのでしょうか。今後もデジタル証券について、もっと詳しく掘り下げていきたいと思います!
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