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避けては通れない税制の話【消費税還付】

Categories : 不動産投資 / 税金

date :
2022-09-17

居住用賃貸建物にかかる消費税の還付について、度々法改正が行われています。近年の大きいニュースですと、令和2年度(2020年度)の税制改正によって不動産投資における消費税還付が受けられなくなりました。

消費税還付とは?

事業者が支払った消費税額が受け取った消費税額よりも大きかったときに、還付金を受け取れる制度です。課税売上に係る消費税額<課税仕入に係る消費税額、と納付税額がマイナスになるケースがあります。例えば、課税売上に係る消費税額が10万円、課税仕入に係る消費税額が15万円で、消費税の納税額が-5万円となるような場合です。このとき、計算上マイナスとなった5万円分の消費税を、税務署から還付してもらうことが可能です。これが所謂「消費税還付」という制度になります。

これまでの法改正の流れ

平成3年度(1991年度)の税制改正で家賃が非課税となり、同時にオーナーは免税事業者となり、消費税還付を封じられました。そこで、どうにかして還付を受けるために様々なスキームが考案されました。これらのスキームの根底にある基本的な考え方は、「不動産賃貸業と別の事業を行うことで課税売上を発生させ、消費税還付を受けられるようにする」というものです。

不動産賃貸業で消費税還付を受けるためには、一括比例配分方式(仕入税額の合計額に課税売上割合を乗じて仕入税額控除を計算する方式)が選択されます。仮払消費税額のうち、課税売上割合の分だけ控除されます。つまり、不動産オーナーが消費税還付の金額をできるだけ多くするためには、「課税売上割合」をできるだけ大きくすることが重要になります。

消費税は消費者が負担する税金ではありますが、納税するのは事業者です。納税義務者である事業者は、売上に含まれる消費税額を納めなければいけませんが、一方で仕入れの際には、仕入れ先に対して消費税を支払っています。ここにおいて、消費税が二重で課税されることを防ぐために、事業者は「受け取った消費税額」から「支払った消費税額」を差し引いて納税することになっています。

消費税の二重課税を避けるための仮払消費税額の控除は、事業者が消費者から消費税を預かっている(=売上に消費税が含まれている)ことが必要です。しかし、不動産オーナーにとっての売上である(居住用の)家賃収入には、消費税が含まれていません。居住用の家賃は、「生活に必要不可欠な『家』は消費という概念にはそぐわない」という社会政策上の理由により、非課税とされているのです。
※居住用物件の賃貸収入は、家賃(賃料のほかに管理費や共益費も含む)や敷金・礼金なども非課税

売上が非課税なので、支払った消費税額が控除されることはありません。このような理由で、不動産賃貸業を営むオーナーは、消費税還付を受けることができないのです。不動産賃貸業においてオーナーは「消費者」とみなされ、消費税を負担する側になってしまいます。

不動産オーナーのほとんどが免税事業者であることも消費税還付を受けられない理由の1つです。事業者には、納税義務がある「課税事業者」と、納税義務がない「非課税事業者」があります。基本的には賃貸経営をスタートする時点ではオーナーは免税事業者です。そもそも消費税還付は課税事業者のための制度ですので、免税事業者であるオーナーは還付を受けられない、ということになります。

消費税還付を受ける為には

1.消費税課税事業者になること

①基準期間(個人事業者は前々年、法人は原則前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超える場合
②特定期間(法人の場合は原則前年度の期首から6か月の期間、個人の場合は前年の1月から6月まで)における課税売上高と給与等支払額がどちらも1,000万円を超える場合
③資本金が1,000万円を超える法人を新規に設立した場合
の条件を満たす場合は消費税課税業者になります。

2.物件の購入・完成月に課税売上を計上すること
3.物件取得後3年間の課税売上割合および通産課税売上割合の変動率が、50%を超えないようにすること
4.物件取得後3年間の課税売上割合および通産課税売上割合の変動差が、5%を超えないようにすること

事業者用賃貸物件は消費税還付が可能

前述のとおり、令和2年度(2020年度)の税制改正で、アパートやマンションといった住宅用賃貸物件にかかわる消費税還付は禁止されました。しかし、これは事業者用賃貸物件には適用されません。店舗や事務所の家賃は課税売上ですので、テナントビルなどは従來通り消費税還付を受けられます。また、住居と店舗・事務所が両方とも存在する建物では、店舗・事務所部分に関しては消費税還付が可能です。これらのケースでは、特殊な消費税還付スキームを使う必要もありません。

住居用賃貸物件では課税売上はほとんど発生しないので消費税の還付は受けられないことをこれまで紹介してきましたが、居住用賃貸物件を事業用として賃貸あるいは売卻する場合、建物を取得してから3年以內にのみ控除することが可能です。居住用賃貸物件を事業用として賃貸する場合は取得してから3年目の課税期間に、売却する場合は売却年度に、一定金額を仕入控除額として加算調整を行うことができます。
居住用賃貸物件を事業用として賃貸した場合:加算調整額 = 居住用賃貸建物にかかった消費税額 × 課税賃貸割合(※)
※課税賃貸割合とは、対象となる期間の居住用賃貸物件に対する賃貸料のなかに消費税が課税される賃貸料(事業用の賃貸料)がいくらあったかを示す割合のことです。

事業者用賃貸物件のオーナーが不動産を取得する場合、建物の取得にかかった消費税分を売上にかかった消費税分から控除することができます。つまり、建物にかかる消費税分が還付されることになり、結果、消費税の負担を減らして(もしくは負担ゼロで)建物を取得することができます。

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